報告日: 2019年8月27日
報告者: 高森 紗津樹、竹内 健、田京剛(編集)

ふとまにの里の新たなシンボル

日本の原風景。

起伏のある丘と森。その間を縫うように、木と石と土で自然に作られた小川が流れ、途中には、水を浄化する働きをするマコモが生い茂るマコモ池、魚やエビ、水生昆虫がいっぱいの三日月池。

小川とつながる手植え自然栽培の田んぼや菜園、葡萄畑も。

甲府に昔ながらにあった、豊かな実りに囲まれた里山を再現した「ふとまにの里」に日本の原風景の象徴とも言える「東屋(あずまや)」が2019年8月3日に建立の祭祀、竣工式をもって完成いたしました。

この東屋を建設する計画は、コンセプト段階まで遡ると、一年前から始まっていました。

今回のレポートでは東屋が出来上がるまでの物語をお伝えします。

なぜ東屋なのか?

東屋には、最初の太陽が出てくる東を開けている家という意味があり、始まりの朝日を入れて、そのエネルギーにより家が始まるという意味もあります。

人間の五体もある意味では家です。そういう意味の「五体=家」が元気でいられるのは、東から太陽を取り入れて、その力で、元気に一日を過ごすことができると捉えることもできます。

そういう意味で、東屋は朝、太陽をいただく場所という意味を広くは持っているのです。そして東屋というのは、最初の光を取り入れて元気になる場所であり、しかも、どこの場所からも、その時その時の太陽のエネルギーを、夕日までいただけるという場所というふうな意味もあります。

東屋は、はじまりの場所。

こうして、ふとまにの里の象徴として、東屋を建築するプロジェクトが始まりました。

伝統的な茅葺屋根の意味

大嘗祭の社殿の屋根で、茅葺屋根か板葺き屋根かの論争がありましたが、古来伝わる日本神話には、茅には神が宿ると伝えられてきました。

そして屋根にまつわる神様に、天児屋命(あめのこやねのみこと)がいらっしゃいます。屋根には、公という意味があるのです。屋根の下にみんなが集まり、雨露をしのいだり、集会をしたりと、そこから「公」が始まります。

また、昔の家は茅でできており、茅葺屋根を見るとそれを思い出したり、DNAが呼び覚まされるため、昔から伝わってきた生き方をお出ししたいと考えました。

神様をお迎えする場所であり、公の象徴でもあり、私たちのDNAを呼び覚ます茅葺き屋根。ふとまにの里には、欠かせませんでした。

デザインのポイントは、不染鉄のようなデフォルメ感

七沢賢治会長を交えどういうものを作るかという話を、大正から昭和にかけて活動した日本画家である不染鉄(ふせんてつ)の絵をモチーフに練り上げていきました。

古代中国に端を発する自然哲学の思想である五行説「木火土金水」の五行の働きを川や畑、田んぼといった本来の自然の姿に触れることで、人本来の感性として取り戻すための実験場である「ふとまにの里」ですが、ふとまにの里になる前は、田んぼや畑として、古くは縄文、江戸時代からずっと続いている土地でした。そこでその時代から、まるですでに存在していたようなものにしようという東屋のイメージができあがりました。

不染鉄の絵をモチーフに、「歴史を感じつつも、全く新しい」
をコンセプトに計画がスタートした。

昔からあったようで、けれど、まるで新しい。

そんなコンセプトを実現するために、東屋といえば、普通は壁も何もない、柱と屋根だけという概念を覆し、江戸時代の古民家のような雰囲気で、まるで昔から今までそこにあったように感じさせ、そして、茅葺の屋根に、土壁があったりなかったり、さらに土間打ちまでしてある家のようなつくりという基本設計ができあがりました。

ミニコラム:茅葺き屋根の現状

「茅葺屋根というのは縄文時代から続く叡智であって、今、失われつつある」

そうおっしゃるのは今回、東屋の茅葺き屋根を施工いただいた長野県を拠点に活動されている(茅)縄文屋根 代表の渡辺さん。

渡辺さん曰く、
「昔の人は茅葺屋根に普通に住んでいて、今はそれが一番最高級のものになっているという意味で、昔のほうが豊かだったのかもしれませんね」
とのこと。茅葺き屋根というのは、今の時代では「一番高い屋根になる」と渡辺さんは言います。

それは、茅を刈って、束にしてつくっていく、というように人件費がかかって、また茅葺き屋根は10年〜20年で定期的に葺き替えていく必要があるためだからです。

(茅)縄文屋根 代表の渡辺さん

茅葺屋根の技術というものが途絶えつつあるのと共に、日本人の感性を磨いてきた原風景の中心にある「憩いの場」の記憶が失われつつあるのではないでしょうか?

東屋の建築の始まり

2019年3月6日

3月6日より、ふとまにの里にて、東屋の建築(組み立て)が開始されました。
朝の8時から開始していまして、当日中にはおおよその骨組みが完成しました。
※その後、基礎の工事や、茅葺などの作業が続きます。

今回のポイントは、基礎の部分でした。
風が強い甲府において吹き飛ばない安全・安心な基礎でありながら、コンクリートを全面に使うのではなく、大地とのつながりを大切にした現代の手法と古来から伝わる手法を融合した最新の工法です。

まだ土に埋まっていない状態で見ると、柱が逆さ向きのキノコのように見えて、面白かったです。
柱も、古材置き場まで行き、探してきたものを、1本1本、工務店さんが加工してくださったもので、柱にするのに1本あたり最低でも1日、4〜5日かかるものもあったそうです。

ふとまにの里の東屋の骨組み作業1日分のタイムプラス

茅葺屋根の工事

2019年3月29日

茅葺屋根ってどうやって作られるの?

3月の最終週から、ふとまにの里にて、東屋の茅葺屋根の工事が始まりました。
縄文屋根の渡辺さんが、工務店さんが作ってくださった骨組みの上に、1本1本、縄で柱となる木と竹をくくりつける作業をした後に、茅を葺いていく作業が行われました。

最初に骨組みの作業を行い、続いて茅を葺いていく作業を行いました。

【茅葺屋根プチ講座】
縄をくくりつける作業の時は、男結びといって、造園などでもよく使用されている、解けにくい、と言われている結び方をされています。(2月の茅刈の時に教えていただきましたが、 やってみるととても難しい・・!)

◎男結び(参考)

2月にneten社員で茅の刈り取りを行いました。
刈る茅(ススキ)自体の大きさも、170~200cmくらいの高さがあって、
かなり重労働になってしまいました。
茅は下から上に向かって葺いていきます。

チャイルド・アーツ・アカデミーで東屋の茅葺きワークショップを開催

2019年4月6日

茅葺き自体は、6,7割程度の完成度となりました。

4月の最初の週末に、チャイルドアーツアカデミー(Child Arts Academy)で茅葺き体験のワークショップを行いました。

子どもたちは、下は3〜4歳くらいの子もいましたが、はしごで屋根の上に登り、小学生の子は実際に茅を屋根の上に置き、縄文屋根を作っている方と茅をくくりつけるという作業をしました。

運動神経のいい子なんかは、東屋のてっぺんまで、棟の上まで登って、立ったりしていました!

ふとまにの里の中で東屋の雰囲気がようやくでてきたかなというところになりました。

今後、東屋の工事は土壁、最後に土間の部分が仕上がったら完成です。

チャイルドアーツアカデミーでは6月には土壁のワークショップを行う計画です。

茅葺屋根を刈り込んで完成!

2019年4月22日

4月22日(月)に、ふとまにの里の東屋の茅葺き屋根が完成しました!
茅葺屋根の最後の仕上げ、刈り込みは、3日間かけて、とにかく細かく丁寧に仕上げていただきました。

【茅葺屋根プチ講座】
東屋の棟造りに千木を用いました。
大祓(中臣祓)の中に「千木高知て」とある「千木」です。
千木:千木は屋根の両端で交叉させた部材
詳細はこちら

土壁ワークショップ

2019年6月2日

チャイルドアーツアカデミーで土壁を塗る体験ワークショップを開催しました。

土壁ワークショップは、山梨名工の深澤さんにお越しいただき、土壁の歴史や手法、作り方、材料などについて、丁寧に説明がありました。

子供も大人も、深澤さんの話を真剣に聞き入り、実践のワークでは、親御さんを含めみんなで土壁を塗りました。

コテの使い方が難しく、塗ってる途中で土が落ちてしまったり、なかなか上手く塗れなかったのですが、深澤さんや松田さんが塗ると、一瞬で綺麗な土壁が出来上がりました。

先人の知恵と工夫で出来上がった伝統的な技を子供達と共有出来た事は、未来に繋がる事だと思います。

土間打ち

2019年7月

東屋の最後の工程である土間打ちが行われました。

カグツチを埋めています。

東屋の建立式の神事

2019年8月3日

夏の気候のおかげで7月に施工した土間の乾燥の順調に進み、7月末に無事に東屋が完成しました。

そして、2019年8月3日、東屋の建立の神事を実施いたしました。

近年、このような神事も少なくなり、日本の伝統文化継承も危ぶまれています。建物にも神をお迎えするという概念プラットフォームから育む日本の古来の叡智を様々な形で継承していく重要さを再確認いたしました。

関連記事

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。