報告者:阿蘇安彦 七沢智樹

報告日:2018/09/21

刀工 伊藤重光氏が製作した、横綱稀勢の里土俵入りに使用される「太刀」の製作過程でD-Waterが使用され、難しいとされる隕鉄による日本刀の製作に貢献しました。

製作工程を後段で紹介しますが、日本刀作りには水は欠かせない物質です。特に隕鉄は「隕石」であり組成が一つ一つ異なります。そのため、脆く刀に仕上げるのは難しい素材です。様々な工程で登場する水にはD-Water別天水」が利用されました。

こちらの動画は、「別天水」「七沢家井戸水(別天水の原水)」「御井御中主(淡路島の天然水)」を使った焼入れの実験映像です。

最初は渋々といった感じで始めた伊藤氏も焼刃土を作る段階で、水の性質の違いに気づき、実験が楽しくなってきた様子でした。実際に焼入れを行い、研いでみると驚きの結果が・・・

伊藤氏からは

「別天水は、余計なものを取り除いて本質を引き出してくれる」

と高い評価をいただきました。水の違いだけで「名刀」「業物」「並」と顕著な違いが現れる様子をご覧ください。

隕鉄刀

日本刀は一般的に純度の高い砂鉄から作られます。
隕鉄は鉄とニッケルを主とする合金です。過去に地球に降下した隕石の一部であるため、採掘場所により微量成分は異なっています。
刀の原料とする場合、加工が極めて難しく、高度な技術を有する刀工が長期間に渡りやっと完成するという貴重なものです。

隕鉄刀の歴史

1890年富山県中新川郡上市町で発見された隕鉄をもとに、刀工国宗は「流星刀」をつくり、皇太子(大正天皇)に献上したといわれています。

稀勢の里関の「太刀」を打った刀鍛冶

netenは、稀勢の里関と交流があり、横綱になる前から隕鉄(鉄隕石)を集めて、用意をしていました。そして、横綱になったタイミングで、いよいよ、土俵入りの太刀を作り始めた訳です。

製作には約一年を要しています。

製作は、neten株式会社代表 七沢賢治の知り合いで、伊勢神宮の御神体を作るような著名な刀鍛冶の伊藤重光さんにお願いしました。

この隕鉄刀というのは、著名な刀鍛冶の人でもほとんど回ってこない仕事で、非常に珍しい仕事となりました。

仕上がりは非常に綺麗なものができ、他の力士も羨ましがっていたということです。この太刀は、住吉大社の土俵入りで、初めて使われました。

太刀の製作工程

ここからは太刀の製作工程をご紹介します。太刀づくりには水は欠かすことのできない重要な要素となっています。

1. 水挫し(みずへし)

材にも良い部分とそうでない部分があり、選別する必要がある。その作業を水挫しという。玉鋼を熱して薄く打ち延ばしていく作業である。玉鋼を低温で熱し、軽く打って鋼がなじんできた頃に温度を上げ、強く打っていく。5粍くらいに打ち伸ばしたら、水に入れて急冷(焼き入れ)する。炭素量の多い部分はこの時自然に砕けて落ちる。砕け落ちなかった部分は次の作業に回す。

卸した材料も作業中に不純物などが混じる場合があるため、沸かし(わかし)にかける。沸かしとは、材料に粘土を泥状にしたものをかけて藁灰(わらばい)をかけて、火床に入れ、熱して沸かすことである。
四角くまとめた後は、5粍ほどの厚さに打ち伸ばし、焼きを入れる。

2.小割り(こわり)

水挫しした材料を2~3㎝角に小割りにする。炭素量の適切な部分はきれいに割れるが、炭素量の少ない粘りのある部分はきれいには割れず、破断面を見て不純物が無いきれいに割れた部分を皮鉄(かわがね)用として利用する。
きれいに割れなかった粘りがある部分は芯鉄(しんがね)用として利用する。

3.鍛錬(たんれん)

鋼を何度も折り返して鍛えることにより、粘りをもたせて強度を増し、不純物を叩き出し、炭素量を平均化させることである。

折り返し鍛錬によって様々な効果がうまれる。

・折り返しを10回行うと層は1,024枚にもなり強靱になる。
・不均一だった炭素量が均一化する。
・不純物が火花となって飛び散り、除去できる。
・鉄の結晶の肥大化した分を、折り返して鍛錬することによって潰し、綺麗な素材にできる。
・折り返すことによって、地肌という美的効果が出る。

4.造り込み

比較的柔らかい芯鉄(しんがね)を、硬い皮鉄(かわがね)でくるむという工程である。
芯には柔らかい鉄が入っているので衝撃を吸収して折れず、外側は硬い鉄でくるまれているため曲がりにくい。また直接物に当たる刃の部分は、硬くて粘りがある材料を別に作っておき、これら各パーツごとに最適化された材料を組み合わせ強くかつ折れない刀をつくる。

造り込みには様々な方法がある。
甲伏せ(こうぶせ)
皮鉄をU字型に折り曲げ、柏餅のように芯鉄をくるみ、沸かしながら打ち伸ばす
本三枚(ほんさんまい)
芯鉄に沸かした刃鉄を取り付け、表裏用に分けた皮鉄を1枚ずつ仮付けして沸かしながら伸ばす
四方詰め(しほうづめ)
本三枚の鎬地から棟にあたる部分を棟鉄として別途鍛えて取り付ける

5.素延べ(すのべ)

刀の反り以外の姿と寸法を決めていく工程である。
刀の長さや重ね、身幅などが出来上がった状態の寸法になるよう鎚で打って形作っていく。その際、水で濡らした金床の上に真っ赤に熱した刀を置き、鎚で打つと一瞬で水蒸気が発生し、その力でこれまでの工程で刀身に付いていたカスなどを吹き飛ばすことができる。これを水打ち(みずうち)と呼ぶ。こうして素延べが終わった姿は真っ直ぐな四角の長い棒となっているが、元幅、先幅、重ね、刃長、切先の大きさなど反り以外の寸法は出来上がりと同じ寸法に仕上がっている。

6.火造り

小鎚を使って刃側を薄く打ち出し、棟側も少し薄く打ち出し、鎬筋(しのぎすじ)を立て刀の形を仕上げていく工程。
日本刀は、棟、鎬筋、刃先の3つの線によって美しい姿が構成されている。焼き入れを行った際に、自然に二分五厘(7.5粍)ほど反りがつくため、仕上がり時の反りを考えてその差分の反りを付けておく。

・切先つくり
切先を作るのに先を斜めに切り落とす。ただ、斜めに切った方が刃側になるのではなく、棟側を切り落とす。そして小槌で打ち出し、完成させる。

7.焼き入れ

火造りが終わった刀身を藁灰で洗って油分を取り、十分に乾かしてから焼刃土を塗る。刃になる部分には薄く、それ以外は厚く塗る。目指す刃文の形に塗り、足などを入れる場合はヘラの薄い部分に焼刃土を付け、足を入れる部分に置いていく。ただし、焼刃土を塗った通りに焼きが入って刃文が出来るという訳ではない。
焼き入れする前の日本刀の組織は、アルファ鉄という状態であり、加熱していくと726度で変態する。これをA1変態点といいアルファ鉄がガンマー鉄に変化する点である。刃文が出るようにするには、A1変態点以上に熱する必要がある。

ただし、800度以上になると鉄の結晶が肥大化する。最も硬くなるのは750~760度に達したときである。刀匠は炎の色で見極めるといわれている。
焼き入れ直前の日本刀はアルファ鉄がガンマー鉄に変わり、オーステナイトという組織になっている。これを水中で急冷するとガンマー鉄がアルファ鉄に変わりマルテンサイトという組織になる。日本刀の刃の部分は薄く、焼き刃土も薄く塗ってあるため、水に入れると瞬間的に冷却されマルテンサイトに変化する。マルテンサイトは硬度が非常に高く、物を斬るのに適している。

8.焼き鈍し(やきなまし)

刀を火から離してゆっくり時間をかけて140~150度に熱する。
焼き入れの際の急激な温度変化で科学変化しきれなかった部分を、安定化させることができ、粘りが出て腰が強くなり刃こぼれも防げるようになる。

9.研ぎ

焼き入れが終わり、反りや曲がりを修正した後、研ぎを行う。
これまで苦労して造り上げてきた刀の出来映えを確認する時でもある。最終的には専門の研ぎ師によって研がれるが、基本的な研ぎは刀匠が行う。

最後に茎にヤスリをかけ、銘を切る。この後、本格的に研ぐために研ぎ師に回される。また、はばきを作る白銀師、鞘を作る鞘師、拵を作る柄巻き師の手を経て、刀が完成する

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