報告者:浅子雄一郎 七沢智樹

報告日:2019/06/07

ものの数分で、立ち方が変わる。

「打てるような気がする」「己を知りました」

2018年12月、誰もが知るプロ野球チームのコーチをお招きし、「三人称視点VR」を体験いただきました。

まずは、360°のVR中継のカメラとVRヘッドセットを通して、ご自身のバッティング姿勢を背中側から映した映像を客観的に見ながら、バットを振るという体験から始まりました。

バットを振るご自身の後ろ姿を見たコーチは、すぐさま

「意外と肩が入ってるな」

「(フォームの)癖が出る」

ということに、早速気が付かれていました。


「肩がこんなに入っているとは思ってなかった。」ということで、研究熱心であった現役時代でも気づかなかったポイントに、三人称視点VRによって、ものの数分で気づかれたことになります。

それにより、「(現役時代は)インコースが不得意だったけど、(VRで客観的に背後から観察したことで)打てない理由がわかった。」とのこと。

背中越しからご自分の姿を見たのは、今回の「三人称視点VR」が初めてということで、目の位置、首の角度、背中の軸などが修正され、その結果として

「ボールの捉え方が変わる。」

「これを自分が治せれていければ、(ボールを)捉えるポイントが高くなるだろう。」

ということで、
三人称視点VRによる自己観察を始めてから10~20分の間に、

● もうバッティングフォームとスイングが変わって、打てる範囲が広がった。

● 軸を感じるというのはこういうことか。

● 立ち方がよくなったので、打てるような気がする。

● 己を知りました。

といったように、変化を捉えたコメントが次々と聞かれ、この三人称視点VRが、客観視点からの自己フォームの調整等において、有効であることが示唆されました。

広い範囲が見えているときは、調子が良かった

次に、VR中継によって、盗塁のときのフォームを背中側から見た氏は、「盗塁フォームはいい」とのこと。

それもそのはず。現役時代は、ファンから「神走塁」といわれるほどの走りで魅了した代走のスペシャリストして活躍し、球史に残る数々の盗塁を記録された方です。


現役時代でも、今回のVR体験のように、後頭部付近から(俯瞰して)見るようにしていたとのことで、

「キャッチャー、ベンチ、カメラ、お客さんなど、広い範囲で客観的に見えているときは、(調子が)良かった。」

とのことでした。

このことから、たとえばトレーニングに三人称視点VRを導入し、視点を自由に設定しながら何度も脳に覚えこませることで、「広く周りを客観的に捉えている」という調子の良い、または上手くいくときの視野というものを獲得することが、誰でも可能になるということが考えられます。

フォームの改造や、スランプから脱するために

また、三人称視点VRによる他者視点から自己を観察するとき、バッティングやピッチングをはじめとした「フォームの改造」や、スランプに陥ったときにも有用であるというご指摘がありました。

とくに、スランプとは原因がわからないものであるということで、いわばそのような原因と対処法が不明の状態(情報場)から、視点ごと物理的に外にはずして(三人称視点)自らを俯瞰するという方法は、スランプを文字通り「脱する」意味においても有用であることが考えられます。

現役時代、後頭部付近から広く視野をとるイメージはあったものの、今回のVRのように背中から見るという感覚がなかったということで、「自分のイメージが冷静に見れる判断材料になる」「(止まっているときだけでなく)動いたときの変化も追うことができる」ということでした。

リアルタイムでの客観視点によって、これまで決して気づくことのなかったこと。

それが、短期間で変化をもたらす。

最後に、「この三人称視点VRを一流のスポーツ選手はやりたいと思うか?」という質問については、

「トップアスリートになるほど、(客観的視点といった)感覚的なものは(その重要性が)分かる」ということでした。


完全なる「客観」というものは決して獲得することができないと長らく哲学の歴史でも言われてきましたが、その客観的視野を実際に体験することのできる三人称視点VRを日常的に取り入れることで、脳がその視点を記憶し、脳そのものの構造や認識の仕方が変わる。

それによって、普段からそういった視点を持てるようになるということが示唆され、スポーツにおける反復トレーニングに三人称視点VRを導入することで、今回の事例のように、これまで決して気が付かなかったことに気が付いたり、脳のシナプスの構造をはじめとした回路が短期間で変化して、結果が変わってくることが考えられます。

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