報告者  浅子雄一郎 七沢智樹

報告日 2019/01/21

概要

前稿までの「三人称視点VRライブシステム」(特許出願中)を利用した、2つの動的なアクティビティと1つの静的なアクティビティの被験者から得たアンケート解析結果と考察を受けて、本稿では、おもにスポーツの分野で報告されるゾーン体験と比較しながら、意識に変容をもたらすことを目的とした三人称視点VRライブシステムとこれらのアクティビティについての妥当性の検証と、三人称視点VRライブシステムが使用者をゾーンに導く可能性について考察する。

目次

  1. ゾーン
    1.1 ゾーンとは何か
    1.2 スポーツにおけるゾーン
  2. 三人称視点VRライブシステムとゾーンの共通項
    2.1 三人称視点VRライブシステムの整理
    2.2 客観視
    2.3 今ここ(プレー)への集中
    2.4 リラックス(落ち着き)
  3. スポーツの分野でのVR活用事例との共通項
  4. まとめ

1. ゾーン

1.1 ゾーンとは何か

ゾーンとは、「極度に集中している時に体験する特殊な精神状態のこと」(※1)であるとされ、近年、おもにスポーツの分野で報告されている。心理学などの学術的な分野においては「フロー(Flow)」とも呼ばれ、1973年に心理学者のミハイ・チクセントミハイの著書『楽しみの社会学』(新思索社)によって、西欧心理学の世界で初めて提唱された。

このときの具体的な心身の状態について、『ZONE シリコンバレー流科学的に自分を変える方法』(大和書房)では、次のように説明している。

「ゾーンに入ると、集中力が極限まで高まり、ほかの一切のものが消え失せる。行動と意識が融合し始める。自分という感覚がなくなる。時間の感覚もまた然り。心身両方のあらゆるパフォーマンスが、限界を超えて高まってゆく。」(※2)

また、同著の著者が執筆にあたって、200人を超えるプロやトップレベルのアスリートに「フローに入る秘訣」についてのリサーチを行ったところ、その秘訣として、「適切なきっかけ」があることに言及している。

つまり、ゾーンやフローとは、ゾーンやフローの状態になる「条件」を満たすことで、通常とは何かが違うと認識できる特別な「状態」となり、通常では考えられないような「結果」を生み出す一連の流れとして、定義できる。

(※1)知恵蔵mini (C)Asahi Shimbun Pubications Inc
(※2)『ZONE シリコンバレー流科学的に自分を変える方法』スティーヴン・コトラー&ジェイミー・ウィール著(大和書房)p.8

1.2 スポーツにおけるゾーン

このような、トップアスリートたちが語る「ゾーン」体験は、学術的対象として、心理学、体育学、生理学、神経学の分野で研究が進んでいるが、とくにスポーツ心理学の発達によって、この「ゾーン」についての現象が少しずつ解明されてきている。

また、実際にゾーンを体験した選手が、ゾーンに継続的に入るための方法を書いた本や研究も、多く存在する。

その中で、ゾーンの体験者それぞれが似たような経験をしていることから、ゾーンに入るための条件や、ゾーンを体験しているときの意識の状態について、共通点があることなどが明らかになってきている。

まず、アスリートの実際の声を見ていくことで、ゾーンを体験しているときの共通点について整理する。

「アマチュアで優勝した時以来、ゾーンに入ることがなかったんです。私、ゾーンに入ると、左上から自分が見えるんです。見えているように、感じるというか…。熊本の時(15歳で達成したツアー優勝)がそうでした。時にショットを打つ時にそうなる。パターの時はラインが見えるんです」

(プロ転向後初のツアー優勝を飾った勝みなみ(20=明治安田生命)のインタビューより 2018年11月)(※3)

「自分の横に、もう一人の自分がいて、プレーしているのを客観的に見ている感じなんです。それでいて、全てをスローに感じる。時間だけがゆっくり流れるんです。」

(全日本女子バレーボールのセッター竹下佳江選手)(※4)

「あの日の感じは忘れられません。リラックスしているのだけど、最高に集中していて、余計な力みが全くないんです。試合前の練習でも、ボールはクラブのど真ん中にスコーンと当たるんです。今日は調子いいぞ、と、ワクワクしていました。ゲーム中は何の不安も緊張もなく、心と体が完全に一体化していて、ただ無心にゴルフをやっているだけ。勝手に体が動いているような感じでした。正直言って、スコアも気にならないくらいでした。そして、自分でも信じられない好成績が出たんです。」

(ゴルフ選手『アスリートが語るゾーン体験』)(※5)

このようなゾーン体験者は、以下の点で共通していることがわかる。

● 自己を客観視した状態である。

● プレーそのものだけに集中している。

● リラックスした状態である。

実際に、オリンピックなどのトップアスリートのコーチングにおいては、緊張や興奮をかきたてるのではなく、リラックスし、落ち着いた精神状態でプレーできること、そして、自分の中の不安な思考に集中するのではなく、いかに「今、目の前のプレーのみ」に没入して集中できるかが、重要であるとされている。

また、ゾーンを体験した選手や、そうした選手のメンタルトレーニングを行うコーチが共通して言うことは、「集中すること」である。反対に、プレーの最中に技術面のことを考えたり、評価について不安に思ったり、失敗を恐れると、ゾーン状態に入れないと言われている。

(※3)日刊スポーツ https://www.nikkansports.com/sports/golf/news/201811180000791.html
(※4)https://ameblo.jp/miki2happy4man/entry-11152595596.html
(※5)http://zone-training.jp/zone-voice.html

2. 三人称視点VRライブシステムとゾーンの共通項

2.1 三人称視点VRライブシステムの整理

前稿まで考察してきた三人称視点VRライブシステムの特徴について整理すると、上述のゾーンに入る「条件」、またはゾーンの「状態」と考えられる3項目との共通項を見出すことができる。

アンケート解析から抽出した三人称視点VRライブシステムの特徴について、あらためて以下に明記する。

Ⅰ.動的アクティビティ①(迷路)

・VRは人間の「視覚の優位性」を通して、VRの映像を観る者の認識や行動に根本的な影響を与える。

・VRの映像が「三人称視点」となるとき、その映像を観ることによる「三人称(客観)」の体験も、根本的なもの(それまでの認識の範疇を超えた、あるいはそれより深まった理解、または自己超越を促す契機)となり、それは、次のA~Eような三人称視点VRライブシステムの特徴的な要素からもたらされると考えられる。

A.状況分析(危険回避)を優先する状況によって、「今ここ」への「集中」をもたらす。

B.状況分析(危険回避)を優先する状況によって、「今ここ」で情報を収集する。

C.情報が遮断されたと感じることによって、「客観的に」情報を収集する。

D.視点が物理的に移動したことによって、その視点からの「客観的な」情報を得る。

E.映像として視覚的に捉えることによって、「客観」が視覚化される。

Ⅱ.動的アクティビティ②(甲野陽紀氏体験)

三人称視点VRライブシステムにおける「情報を遮断」する特徴は、意識や脳による制限的な情報(認識)を外し、制限されていた潜在的なものや本来の能力を引き出したり、治療等の効果をあげることを阻害する因子を回避して、効果を最大化することなどに繋がると考えられる。

Ⅲ.静的アクティビティ(祓い鎮魂)

①「今ここ」への集中

②「記憶」の想起の回避

③「客観」による視覚的な具体化とフィードバックが引き出す強調感覚

三人称視点VRライブシステムを利用したアクティビティ体験者のアンケートで観察できた要素は、「今ここにおける集中」「客観」と、制限や潜在していたものが解放されるといった、「ゾーン」によるピーク・パフォーマンスを想起させるものであった。

また、ゾーンに入る条件や状態としての「リラックス」「落ち着き」についても、VRでのアクティビティ体験者の声から抽出することができる。(後述)

「リラックスした状態である」「プレーそのものだけに集中している」「自己を客観視した状態である」というゾーンの条件や状態と、三人称視点VRライブシステムの親和性の高さを伺うことができよう。

以下、ゾーンにまつわるこれらの3項目を、スポーツの場面でのゾーン体験とVR体験者のアンケート内容を比較しながら、一つ一つ考察する。

2.2 客観視

「客観視」とは、ゾーンに入る条件としてのもの以前に、勝敗という形で結果の出るスポーツの分野において、殊更に重要な意味をもつ。プレーの最中、プレーそのものではなく、勝敗に関わる不安、恐怖といった感情に支配されたり、「うまく打たなくては」と評価を気にしたり、「失敗したらどうしよう」とネガティブな思考にとらわれてしまう状態は、プレーの質に関わる問題であろう。

プロの野球選手やオリンピック出場選手など、さまざまな競技のトップ選手のメンタルトレーニングを行ってきた『実践メンタル強化法』の著者である白石豊氏は、メンタルトレーニングの実際として、「自己客観視」が重要であると述べている。

アトランタオリンピック女子バスケットボール代表だった荻原美樹子選手は、白石氏のメンタルトレーニングについて、次のように語っている。

「一番初めに与えられたのは、『自分を客観視せよ』というものでした。練習中、あるいは試合中、もう一人の自分を常につくっておいて、プレイしている自分を頭上から冷静に観察するというものです。それで気づいたことをノートに書き留めておくように言われました。『あたかも、どちらのチームにも加担せず、笛を吹く審判のように見てごらん』と先生は付け加えられました」

(白石豊『実践メンタル強化法』大修館書店,1997)

このように、自己の状態を客観視する手法は「セルフモニタリング」と呼ばれ、スポーツだけでなく、高いパフォーマンスが求められるビジネスの分野でも注目されている。

しかしながら、「客観視」が大切であることが分かっていても、いざ実践をしようとすると難しいものである。たとえば、上述の荻原美樹子選手は次のように語る。

「これ(引用者注:自己を客観視し、ノートに記録すること)は大変難しい作業であった。まず、自分の客観視、というのがなかなかうまくいかない。『客観視するんだ!』と追い詰めてしまうことで、「嘘の」感情がでてくるのだ。つまり客観視している『つもり』の感情。それを見分けるのが一苦労だった。」

(白石豊『スポーツ選手のための心身調律プログラム』大修館書店,2000)

練習の間や試合の最中に襲ってくる言い知れぬ恐怖や不安に対し、無理に明るくしたり、確証のないままの開き直りでリラックスしたつもりになることも、やはり「つもり」や「嘘」といったものに、恐怖や不安の感情と同様、「とらわれている」構図には変わらないだろう。

スポーツの場面で機能させるにあたって、客観視が目的とするものの一つは、このとらわれの構図から出ることである。また、このとらわれから解放されるからこそ、「ゾーン」という通常とは異なった状態にシフトできるとも考えられるだろう。

このとき、三人称視点VRライブシステムは、自己の通常の視点とはまったく異なった視点からリアルタイムに中継される自己の姿を見るという点において、「自己と完全に切り離して客観視する」ことを、大いに助けると考えられる。

Report 001で論述した「意識=VR」理論、また
Report 002 で報告した「視覚の優位性」によって、意識的、視覚的に自己と完全に切り分けられることで、とらわれの構図からも、意識的、視覚的に切り分けられるということである。

また、前述のアスリートのインタビューでは、「ゾーンに入ると、左上から自分が見える。」「自分の横に、もう一人の自分がいて、プレーしているのを客観的に見ている感じ。」といったように、三人称視点VRライブシステムのような自己から離れた視点について言及している。

つまり、三人称視点VRとは「ゾーンのときの体験(視点)」としてこの機能を評価することが可能であり、客観視がスポーツ全般において重要とされる文脈においてだけでなく、このようなゾーン状態特有の客観視とも共通項をもつシステムとして、捉えることができる。

三人称視点VRライブシステムにおけるアンケートでは、客観視について、次のような感想が見られた。

●客観視しやすいですね。楽しい経験でした!

●客観視とはこういうことかと思いました。

●「客観視」という言葉は使い慣らされた言葉ですが、自分を客観視するということが、実態を伴ってできる貴重な体験に感じました。

●客観視というのはこういうことかな?!と言葉でなく映像で体感するという感覚を簡単に理解できるような気がしました。

●肉体から離れる体験を通して、自分という存在のリアルがより強く感じられたことと、他方で、自我への執着は軽くなった気がします。

●自分の頭の思考が浮かんでもすぐに俯瞰している別の自分(後ろから見ている自分)にも気づくという感じがして、その思考から離れやすい…というような感じ。

このように、「客観視」が視覚化され、視覚的に客観視している状態を捉えられるようになることで、客観についての理解が新たになったり、それに伴って「(自我への)執着が軽くなった」「思考から離れやすい」という感想も見られた。

このことから、三人称視点VRライブシステムは、スポーツの場面でのパフォーマンス向上やゾーンに導く要素としての「客観視」において、有用であると考えられる。

2.3 今ここ(プレー)への集中

前項で述べたように、スポーツにおいては、自分の中の不安な思考に集中するのではなく、いかに「今、目の前のプレーのみ」に没入して集中できるかが重要であるとされ、「ゾーン」の状態においては、この集中が極限まで高まるといわれている。

実戦に臨むプロの間で高く評価されている「インナーゲーム」理論(※6)の提唱者であるティモシー・ガルウェイは、精神状態が常にプレーの出来を左右し続ける理由について、人間の心には「エゴ(自我)」と「セルフ(自己)」という二人の自分が住んでいるからだと述べている。

心の中のエゴは、集中してプレイしなければならない場面で、「打たなければ」「技術に気をつけて」「ミスをしてはならない」というように必死に考え、働く。このようにエゴが働いている状態では、選手は注意散漫な状態となってしまうだろう。

本来、セルフの働きに任せていれば、運動をオートマチックに習得したり、修正することができるにも関わらず、エゴが働くことによって、選手は自己を疑い、集中力を奪われ、それがさらなる不安をもたらし、プレーの質を大きく落とすということである。

トップで活躍する一流の選手でも、このようなエゴの働きによってミスをする。プロゴルファーとしてUSオープンなどで優勝し、意図的にゾーンに入ることのできるデビッド・グラハムは、力量があるにも関わらず、なぜトップ選手がミスをするのかについて、次のように語る。

「キャシー・ウィットワースは、歴代の女子プロゴルファーの中でも、もっとも偉大なプレーヤーの一人として数えられている人である。しかし、そんな彼女でも、わずか4フィートのパットをミスして、LPGAの初タイトルをとり損なったことがある。(中略)ウィットワースは、あの場面ではパットをしっかり打つことだけに集中していればいいのに、もし外れたらどうしようというようなことばかり考えていたと後悔した。この例からもわかるように、勝負を決めるショットの大切さばかりに意識が向き始めると、たいていはミスショットにつながってしまう。こうした考えを持つようになると、不安にかられて神経質になっていく。消極的な感情で心が満たされると、ゾーンは音を立てて崩れ去っていく。」

(デビッド・グラハム著、白石豊訳『ゴルフのメンタルトレーニング』大修館書店,1991)

このように、実際にゾーンを体験した選手や、そうした選手のメンタルトレーニングを行うコーチが共通して言うのは、「集中すること」である。

一方で、集中を欠いてしまう原因とは、結果や不安といった感情へのとらわれ、つまり客観視を欠いていることであると換言することができるだろう。

「客観視の視覚的な獲得」を大きな特徴とする三人称視点VRシステムの体験者から、以下のような「集中」にまつわる感想が多く見られたのは、この客観と集中の関連性を裏付けるものとしても注目に値する。

●ものすごく集中できました。

●いつも一人でやっているとき以上に祓いに集中出来ます。その分言葉も一語一語に集中していると感じました。

●ヘッドセットを装着しているせいか視野が狭まるような1点に集中するような感覚がある。

●実に集中できて効果的。雑念も浮かびにくくてよかった。

●VRをつけないのは全然集中できなかった。

●自我が消えて集中力があがり素晴らしいツールだと実感しました。

前項でも、「自我への執着が軽くなった」という感想が見られたが、集中という文脈においても、「自我(エゴ)が消える」という感想が観察できる。

これは、三人称視点VRライブシステムによって「自我(エゴ)」から、意識的、視覚的に切り離されることによるものと考えられ、またそれによって、ティモシー・ガルウェイの言葉を借りれば、運動をオートマチックに習得したり、修正することができる「セルフ」の体験、つまり、ゾーンにつながるものとしても解釈ができる。

(※6)1976年「インナーゲーム」ティモシー・ガルウェイ著 日刊スポーツ出版社(原題 The Inner Game of Tennis, ISBN 9780394491547 1974年)

2.4 リラックス(落ち着き)

スポーツの世界では、「やる気」「気分の高揚」「根性」「緊張感」といったものが勝利をもたらす精神状態であると、一般的にイメージされる。

その一方で、フローやゾーンに入った状態とは、精神的に極めて落ち着いており、リラックスしている状態であると一流のアスリートが口をそろえて証言していることがよく知られている。

また、実際にオリンピックなどのトップアスリートのコーチングにおいても、緊張をかきたてるのではなく、リラックスし、落ち着いた精神状態でプレーできることが重要であるとされる。

ストレスやプレッシャーによってアドレナリンが大量に分泌されると、力とエネルギーは湧き上がる一方で、筋肉を繊細にコントロールすることが不可能になるからである。

(※7)勝負のかかったスポーツやビジネスの現場において親和性が高いものとして語られる「アドレナリン」は、行動をコントロールできないほど怒っているとき等に、大量に分泌されているものであると言われている。

このことから、「リラックス」とは、前項までの「客観」や「集中」するという「コントロール」を支えるものとしても、パフォーマンスの向上やゾーンに導く重要な要素であると考えられる。

三人称視点VRライブシステムの体験者からの感想では、「リラックス」にまつわるものとして、次のような声が挙がっている。

●妙に冷静で落ち着いていました。

●何をしていても安心のような感じがします。

●落ち着ける感覚が出てきました。

●身体が軽くなっていくのを感じました。

三人称視点VRライブシステムによって、なぜ落ち着きやリラックスした感覚がもたらされるのかということについては、通常の視野では捉えることのできない360度視野の体験によって、自己の中心点としての軸を獲得したこと、または、Report 004でみたように、VRを通すことによる「間」という安定感の獲得から、これらを落ち着きやリラックス、「何をしていても安心」といった感覚として認識した等の推測ができるが、この点についての明確な機序は明らかではないため、今後の研究課題としたい。

いずれにしても、三人称視点VRライブシステムは、スポーツのパフォーマンスやゾーンにおける「リラックス」という要素についても、その親和性の高さを伺わせるものをして注目に値する。

これまでの三人称視点VRライブシステムとゾーン、それぞれの共通項をまとめると、下記のような図を構成する。

(※7)デビッド・グラハム著、白石豊訳『ゴルフのメンタルトレーニング』大修館書店,1991

図1 三人称視点VRライブシステムとゾーンの共通項

3. スポーツの分野でのVR活用事例との共通項

スポーツのトレーニングでは、肉体的なフィジカルトレーニングだけでなく、イメージトレーニングの重要性が指摘されている。

その中で、VRのヘッドセットを取り入れて安全かつ効率的にプレイシーンを再現、体感し、従来のイメージトレーニングを超えたイメージトレーニングができるツールとして、VRを活用する動きが進んでいる。(※8)

たとえば、実際の試合の場面をヘッドセットを通して見る場合、プレイヤーの視点でのVR体験が可能になることで、単一視点からのビデオ映像とは異なり、作戦を理解したり、実際にプレイヤーの動きを確認したりといったことが、より効果的にできると言われている。

これは、VRの映像による高い再現性と臨場感、そして繰り返し体験が可能というVRの特徴を活かした利用法であるといえるだろう。

図2 (※9)

では、スポーツのトレーニングにおける上述のようなVR利用によって、どのような成果を達成したいのかといえば、やはりそれは本番でのパフォーマンスの向上であり、このパフォーマンスについて詳細にひも解くならば、落ち着いた精神や高い視点からの状況分析、高い集中を維持することだろう。

そして、いわゆる「ピーク・パフォーマンス」とは、前項まで見てきたこれらの「リラックス」「客観視」「集中」が「ピーク」を迎えることであり、このような「ゾーン」の状態こそ、昨今のトレーニングでVRを活用する最終目的であるとも捉えることができる。

そのようなとき、ゾーンに入るこれらの条件や状態と親和性の高い三人称視点VRライブシステムが、スポーツのトレーニングをはじめとしたパフォーマンスの向上に応用可能であることは、十分に考えられるだろう。

また、今回の三人称視点VRライブシステムで観察できた「ピーク・パフォーマンス」にあたるものとしては、甲野陽紀氏のVR体験によって明らかになった、VRヘッドセットを通した情報のカットがもたらすと考えられる「間」における安定感や、通常では考えられないような力が出るといった事例に見られる。

以上から、三人称視点VRライブシステムは、ゾーンに入る「条件」またはゾーンの「状態」、ゾーンが生む「結果」のそれぞれにおいて、符合する特徴を有したシステムであると評価することができる。

(※8)Gigazine https://gigazine.net/news/20160104-vr-sports-training/
(※9)Gigazine https://gigazine.net/news/20160104-vr-sports-training/

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