報告日: 2019年8月1日

報告者: 木村真(生命科学博士)

1.目的

Nigi(開発:neten株式会社)が、人の計算能力および自律神経系に与える影響を検証することを目的とした。

2.背景

近年、GAFA(Google、Amazon.com、Facebook、Apple Inc.)など米国主要IT企業をはじめとして、マインドフルネス瞑想を福利厚生の一環として正式に採用するケースが増えている。このことは、日常におけるリラックス状態への移行が個人のパフォーマンス向上、ひいては企業の業績向上にとって重要な要素であり、その実現に向けた具体的・実践的な手法が求められていることを示している。

しかしながら、リラックス状態は各個人の主観的感覚であり、客観的な考察をおこなう場合、その状態を数値化して検証する必要がある。

Nigiは意識に作用することを目的として開発・提供され、利用者から高い評価を得ている。今後、Nigiが幅広く利用されるためにはその作用を客観的に評価する必要があり、その指標として、人の能力やリラックス状態に及ぼす影響の科学的検証が求められる。

そこで今回、Nigiを使用している際の計算能力の変化の検証、および、心電図データに基づく自律神経の交感神経と副交感神経のバランス状態(以下、自律神経のバランス状態)の解析をおこなった。

3.実験方法

(1)被験者

計算能力の変化の検証、自律神経のバランス状態の解析とも、neten社製品に関する情報をもつ28名のグループ(以下、情報ありグループ)とneten社製品に関する情報をもたない28名のグループ(以下、情報なしグループ)、合計56名を被験者とした。

(2)実験プロセス

被験者に表1のようなプロセスでクレペリン検査を実施し、並行して心電図を計測した。

本実験では、0~9の数字が1行にランダムに47個、13列程度並んだ数列の計算シートを用いた。被験者は合図によって左右に隣り合う一桁の数字の足し算を行の左端から開始し、20秒または30秒ごとに与えられる合図で、次の行の左端から再び足し算をおこなうという作業を3分間おこなった。この作業の後、3分~5分の休息を取り、再び新たな行から計算をするという繰り返し作業を実施した。

検査の実施中に電源をオンにした状態と休息中にオフにした状態で、利き手と反対の手にNigiを握らせ、実施できた演算数と心電図をグループ内の平均値、またはグループ全体の平均値で比較した。

表1)被験者に指示されたモニタープログラムと計算効率の算出方法

4.結果

(1)計算能力の測定

両方のグループで、Nigi使用時に計算効率の上昇が見られた。

(下図における斜めの線が変化がない場合の値。縦軸がオン、横軸がオフ。ほぼすべての被験者で、「オン」にした時に、完了数(スコア)が大きくなっている。)

①情報なしグループにおける計算能力の変化率

グラフ1)情報なしグループにおける計算作業効率の変化
(第1回目にNigiをオフにした状態での演算数を1とした)

情報なしグループ28名の平均値において、1回目にNigiをオンにした状態では、16.4%の上昇率が見られた。

2回目にNigiをオンにした状態では、4.7%の上昇率が見られた。

1回目と2回目を平均値すると、10.6%の上昇率が見られた。

②情報ありグループにおける計算能力の変化

グラフ2)情報ありグループにおける計算作業効率の変化
(第1回目にNigiをオフにした状態での演算数を1とした)

情報ありグループ28名の平均値において、1回目にNigiをオンにした状態では、15.4%の上昇率が見られた。

2回目にNigiをオンにした状態では、10.0%の上昇率が見られた。

1回目と2回目を平均値すると、12.7%の上昇率が見られた。

情報なしグループと情報ありグループの比較

グラフ3)1回目と2回目の平均値における情報なし・情報ありグループの比較(第1回目にNigiをオフにした状態での演算数を1とした)

情報なしグループは10.6%の上昇率であったのに対し、情報ありグループは12.7%の上昇率を示した。

(2)自律神経系の変化

心電図は、LF値、HF値、およびLF/HF値の分析を実施した。

一般的に、HFの上昇とLF/HFの低下は副交感神経優位の傾向を示す。

以下に、これらの値における、情報なしグループと情報ありグループの変化を見ていく。

① 情報なしグループにおけるHF値とLF/HF値の変化

グラフ4)情報なしグループにおけるHF値、LF/HF値の変化
(第1回目にNigiをオフにした状態での演算数を1とした)

情報なしグループ28名の平均値において、1回目、2回めとも、HFの上昇と、LF/HFの下降が見られた。

② 情報ありグループにおけるHF値とLF/HF値の変化

グラフ5)情報ありグループにおけるHF値、LF/HF値の変化
(第1回目にNigiをオフにした状態での演算数を1とした)

情報ありグループ28名の平均値において、

1回目では、HF値の上昇と、LF/HF値の下降が見られた。

2回目では、HF値の上昇は見られたが、LF/HF値には変化が見られなかった。

③ 全被験者におけるHF値とLF/HF値の変化

グラフ6)全被験者におけるHF値、LF/HF値の変化
(第1回目にNigiをオフにした状態での演算数を1とした)

全被験者56名の平均値において、1回目、2回めとも、HFの上昇と、LF/HFの下降が見られた。

5.考察

Nigiを使用する回数や頻度によって一定のばらつきが予想されるものの、その使用によって被験者の計算能力が上昇した。

同時に、neten情報を持たないグループ、また、全被験者において、HF値の上昇とLF/HF値の下降が見られたことは、Nigiの使用が副交感神経優位の状態、つまりリラックス状態を生じさせることを示唆している。

これらのことから、Nigiの使用によってもたらされるリラックス状態が計算能力を向上させたと推察される。

リラックス状態は人の様々な能力を向上させることが知られており、Nigiの使用は、計算能力のみならず、人の様々な能力を向上させることが期待できる。

なお、neten情報を持つグループが、情報を持たないグループよりも計算能力の伸びが少なかったことは、情報を持つグループには日常的にNigiを使用する被験者が含まれており、すでに計算能力の向上が生じている可能性が考えられる。

6.今後の課題

規則正しい深呼吸をしている状態では高いRSA(呼吸)効果が存在するため、呼吸の影響により副交感神経活動が増大している可能性についても考慮する必要がある。

今後は血圧、呼吸、血糖値等のデータも測定できる生体センサを活用したデータ収集が有効であると考えられる。

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